永遠の別れ
◆そぼ降る雨の中、なだらかな坂道のある住宅街に入る。閑静なところだ。
親切な案内の女性が、あそこに見えるののがそうですと指を差す。
「玉ネギのような屋根があるでしょう」
たしかに尖塔が玉ネギ型である。
それが、楠原映二さんの葬儀の行われている教会だった。
昨夜は通夜であった。キリスト教では、前夜式という。今日が告別の式である。
東京キッドブラザースから俳優人生をスタートした楠原さんのことを、正直よく知らない。会ったこともない。
知っているのは彼の奥様のほうである。だけど、話はいろいろ聞いている。
楠原さんはロンドンに居を構え、イギリスで仕事をしていた。テレビに映画に舞台。東洋人の役は、ほとんど彼がやっていたそうだ。
下手な日本語ぽい英語を使う紳士、ビジネスマン、商店主、給仕……などなど。
映画「エレファントマン」(デイヴィッド・リンチ監督)、「アイズ ワイド シャット」(スタンリー・キューブリック監督)などにも出演していた。
教会にはめったに会えない人が来ていた。そんなときでないと会えないのが悲しいが、しかたない。
杉の子マスター、田崎夫妻、小杉さん、ズーさん、ラムちゃん、純ちゃん……。
前夜式のあとは、場所を移して「忍ぶ会」。そして、解散後、近所のバーで軽く引っかけて帰宅。
◆一夜明けて、今朝の雨は一際強い。
アニーはついにあきらめたのか、自分専用のワンコフードに口をつけた。
さ、今日も仕事。今月中に上がらない原稿は、連休明けになる。
催促の電話が来たのでそう告げた。
by kingminoru | 2010-04-28 08:10 | 演劇・落語