江戸川乱歩

◆仕事場を設けて、はや一ヶ月以上が過ぎた。
 ようやく仕事場での執筆態勢が整ったのは、5月の末だろうから、そのときから約一ヶ月ということになる。
 それまで自宅の書斎が仕事場だったので、いつも近くには家人や犬や猫がいて、さらに郵便物や宅急便などの訪問があり、わたしが留守を預かって仕事をしているとその対応に追われたり、出たくない電話に出なければならなかった。
 そのたびに仕事が中断し、大事なところで集中力が切れるということもあった。
 便利なのは腹が減ったり、喉が渇いたりしたら、リビングに行って勝手に冷蔵庫を開けて、あるいはテーブルの上にのっている食べ物を口に放り込むことができたことだろうか。
 しかし、仕事場にも冷蔵庫は入れているし、飲み物は常に入っている。まあ、食べ物はなきに等しいので、腹が減ったら買いに行くか、適当な店で食べればいいわけだ。
 食べ物屋は仕事場のそばにいくらでもあるので困ることはない。
 
 おっと話が横道にそれた。
 では仕事場で集中力が増したかというと、まあ、それはわからない。
 ただいえるのは邪魔をされることがないということだ。
 電話が鳴ることはない。これは誰にも教えていないからである。
 では電話は必要ないではないか、といわれそうだが、PCを使うにあたっては電話回線は必要だ。モバイルも考えたが、やはりケーブルが繋がっているほうが安心するのでそうしたのだ。
 もっともモバイルも使っていたが、ほとんど使わなかったのでやめたのだ。
 それから訪問者がいない。新聞の集金も勧誘もないし、郵便物やその他の届け物はすべて自宅にしているので、そういった業者も訪ねてこない。
 だから、仕事をしているときはほとんど邪魔が入らない。
 これはとても素敵なことだ。
 しかし、仕事の捗り具合はあまり変わらない気がする。
 もったいない。
 もう少し頑張って書かなければならないな。
 そんなことを少し反省している。
 
 そして、恥ずかしいことを打ち明ける。
 作家デビューして、もう21年にもなる。
 当初は冒険小説やハードボイルドを書いた。
 推理小説は好きだが、まわりにたくさんの作家がいたので、ついに手を出さなかった。いや、書けなかったのだろう。
 しかし、そんな作家たちがいつも口にするのが、江戸川乱歩だ。若いころ狂ったように読んだという作家もいる。いまもなお絶賛する人もいれば、読むべきだと勧める人もいる。
 それなのに、わたしは振り向くこともなく、読みたいとも思わなかった。
 馬鹿である。早く読めばよかった。

 そして、光文社から文庫版で江戸川乱歩全集が出た。
 以前、その全集をおねだりして贈ってもらったのだが、まだページをめくっていなかった。
 
 今日その全集を眺めながら、たまには読んでみようかと思い立ち、一巻を手にして読み進めた。ああ、止まらぬではないか。
 なぜ、早く読まなかったのだと忸怩たる気持ちになった。
 恥ずかしながらも、多くの人に遅れをとって、わたしは乱歩にハマりつつある今日であった。
 




 


 
[PR]

by kingminoru | 2015-06-23 16:56 | 小説家(小説)