親戚がまた減った

■高木の伯母さんが逝った。母の姉である。
 数年前に痴呆症にかかり、真っ白い髪になっていた。実の息子にあんたはどこの誰でしたかと聞き、わたしに会うと、医者と間違えて先生どうもありがとうございますと頭を下げていた。
 幼いころはよくその伯母の家に遊びに行ったものだ。夏の日盛りの午後に、西瓜を割ってくれたり、素麺を作ってくれたりした。
 わたしが成長し、久しぶりに会うたびに、目尻に縮緬じわを寄せて、「大きくなったねえ」といっていた。
 そんな伯母の姿を瞼の裏に浮かべると、いつももんぺ姿か割烹着姿だ。背の低い人だった。いつもやさしい顔をしていたが、笑うともっとやさしい顔になった。
 伯母さんいくつだったんだ? 年も忘れている。母より上なので、80前後のはずだ。 不思議なのは、痴呆症になってから伯母が標準語を話すようになったことだ。それまではバリバリの熊本弁だった。わたしでさえ、わからない方言をしゃべった。それなのに、いきなり標準語だった。今度は東京近辺に生まれるのかもしれない。

■それにしても最近は身内で亡くなる人が増えている。それなりの年になったということだが、訃報を聞いてもなかなか帰ることができない。近場なら飛んでいけるのだが、九州だからそうそうには帰られない。ただ、遠いところから冥福を祈るだけだ。 
 そろそろ喪服を新調しなければならない。持っている黒の礼服はかなり古いからな。
 何もできないので、伯母さんに花火を見せてあげよう。そういえば高木の家から急な坂道を下ると、そこは緑川で、夏には大きな花火大会が開かれていた。今も行われているのだろうか……。
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by kingminoru | 2006-07-20 14:55 | 小説家(小説)