メディアへの提言

b0054391_9325484.jpg■新宿東口駅前。東洋一の歓楽街歌舞伎町への玄関口でもある。
 その駅前広場に吐き出され、またステーションビルに吸い込まれていく数は、日に百万人は下らないだろう……。
 
 まだ薄暗い朝、その広場にひとりの青年が現れる。
 背中には手書きの看板を背負っている。
『一緒に掃除をする人募集』
 彼は手袋をはめ、広場に散らばったゴミを集める。空き缶、空き瓶、煙草の吸い殻、塵紙、新聞、スナック菓子の袋……。それらを黙々と拾い、掃き、集める。ゴミは燃えるもの、燃えないもの、アルミ類、ビン類などと仕分けする。

 コンクリートの地面には吐瀉物もある。もちろんそれも清掃する。せっかく集めたゴミを蹴っていく大馬鹿もいる。彼は関知せず、蹴られて散らかったゴミをまた拾い集める。
 来る日も来る日もそれをつづけている。

 彼は上智大学に通う学生である。何か人のため、社会のために役に立つことをしたいと思いつづけていたが、時間がない、機会がないなどの口実をつけて何もしてこなかった。
 だが、ある日突然、東口駅前広場の汚さを目の当たりにして一念奮起した。
 たったひとりではじめた社会奉仕だが、今はひとり二人と手伝ってくれる人が現れている。寒い朝は、暖かい缶コーヒーを持ってきてくれる、やさしいオバサンもいる。
 彼の小さな善意は少しずつ報われている。

 昨日の朝、NHKニュースのなかで紹介された特集だった。わたしは感動した。こういったときメディアの意義を感じる。
 殺した、切断した、騙した、自殺、談合などの暗く、気の滅入るニュースばかりが目立つが、それは報道の義務があるから致し方ないだろうが、世の中には人の心をホットにさせてくれる事象がいくらでもある。

 上智大生の自主清掃もそのひとつ。彼のことを知ることで、触発を受けた人間もいるだろうし、よしぼくも、わたしも何かの役に立つことをしてみようと思った人も少なくないと思う。何もできなくてもいい。ただ、そういう気持ちを持つことは非常に大切なことだ。
 だから、メディアはもっとこういう話題を数多く取りあげるべきだと考える。
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by kingminoru | 2007-01-21 09:24 | 小説家(小説)