KOされる

b0054391_11483414.jpg■「ちょうど、きっかりです」
 男はかっちりした黒革のサイドバッグから現金を取り出して、テーブルに置いた。
「いつも、ちょうどじゃねえか」
 右足首を左膝に乗せたくわえ煙草の男が、金を受け取って数えるはじめる。そのテーブルの向かいには、風采のあがらない太った男が、金を数える男の機嫌を取るようなことばかりをいって、しきりに愛想笑いをする。
 
 隣のテーブル席で読書に耽っていたわたしは気になって、目の端でその男らを盗み見た。
 ギョッ。
 なんて強面なやつだ。くわえ煙草で金を数える男は、見るからにそっちの筋のものだった。つまり、三人ともその世界ものだろう。
 
 わたしは打ち合わせのために渋谷に出かけていたのだが、少し早く着いたので、時間をつぶしているところだった。それに打ち合わせの喫茶店を決めていなかったので、この店でいいだろうと考えていた。
 そんなところに、あちらのギョーカイのお兄様たちがいらしたというわけだ。だが、わたしには関係のない人種なので、そのまま読書をつづけていたのだが、しばらくして、
「組長*******」
 金を数えていた強面の男がそんな声をかけた。あとのほうはよく聞き取れなかった。
 わたしは組長と呼ばれた客を見た。
 ギョ、ギョッ。
 スキンヘッド、鶯色のジャケット、金バックルのベルト……。
 まるで、絵に描いたようなやくざの親分。
 何だー、この店は……。
 他の客はごく一般的なピープルであったが、わたしは、この店は打ち合わせには相応しくないと判断した。少し早かったが、店を出た。
 すごいシチュエーションを体験した。昨日の夕方のことだ。

■そんなことがあったあとで、担当者と合流。
 喫茶店での打ち合わせを流し、そのまま地下の料理屋に。そこで担当者の引き継ぎを受け、新作のことを話し、出版月を八月にするとか、今後の展開などをざっくばらんに話して、酒を飲む。
 ひととおりの話が終わったところで、河岸を変える。

 わたしの行きつけの、隠れ家的な店だ。話はあれこれ盛りあがる。
 そのうち、バイオリニストの古澤巌が入ってきて、仲間になってまた話が盛りあがる。めためたに飲んで帰る。
 帰る電車のなかで地元のやつらから呼び出しを受ける。酔っているわたしは、その酔った勢いのままやつらのいる店に突撃だ。
 
 結果的に浴びるほど飲んでしまった。
 そして、今朝は、アニーの散歩にも行けず、ベッドでグロッキー状態。風呂に入ったら少しはよくなるかと思ったが、効果なし。
 本日はノックアウトされて、マットに沈んだ状態だ。一〇カウントされても、起きあがることはできない。

■午後から雑用をこなすことにする。
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by kingminoru | 2007-04-11 11:38 | 小説家(小説)