おそるべし、あなおそるべし

■昨日のつづきである。
 中央の内陣には金襴の打敷をめぐらし、緞帳(どんちょう)の柱かけに囲まれた須弥壇(しゅみだん)がある。中央は二十畳敷きの間である。その両側には上間、下間と同じ二十畳敷きほどの広間ががつづいているが、戸障子をはずして、せりだした広縁の広さも加えると、かなりの坪数となった。展示品は、この三つの部屋をぶち抜き、須弥壇も、位牌堂も、見えぬように白幕でかくしてしまうと、何ともいえぬ古雅な趣をたたえた広場といった感じがした。

※これだけで、かなりの情景が目に浮かび上がるが、これに輪をかけた描写がつづく。

 眺めは、何といっても方丈前の白砂に箒目をかけられた庭園だったろう。四条センターなどではみられない天然の優雅なものである。正面の白砂は、五線をひいた土塀によって囲まれていて、その塀ぎわに青苔の生えた築山がいくつもあり、形のいい赤松や栂が、長い枝をさしのべて、白砂の上にくっくり影をおとしている。

※丁寧な描写だ。ここまでしつこく書かなくてもと、思う人もいるかもしれないが、いやいや本文を読んでいると、これは絶対描かなければならない箇所であることがわかる。

■出典について、早瀬(偶然にもわたしの友人)が見事正解をした。
 そう、あの名作、水上勉「五番町夕霧楼」だったのである。
 おそるべし、あなおそるべし水上先生。先生にもっとお会いしておきたかった。

■本日は朝から資料読み。これで終わりそうな雰囲気・・・。 
 次回は、また別の作品を取り上げようと思うが、のっぴきならない所用があり三日ばかりブログを休みます。
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by kingminoru | 2005-04-28 14:44 | 小説家(小説)

わかったらスゴイ

■そのよしあしはともかく、このわたしのブログを読んでいる人は、日に200人はくだらないようだ。とくにこれから作家をめざす人も少なくないようである。わしはそんな人たちに刺激を受け、毎日切磋琢磨している。
 そこで今日から何日かにわけて、わしが感銘を受けた文章をいくつか紹介していくことにする。これはわしも非常に参考にしたり、またこういうふうな表現ができるようになりたいと思うものであるから、見逃すと損である。

■山内には十いくつもの塔頭(たっちゅう)寺院があって、枝振りのいい黒松の林の中に、本山宗務所の大きな庫裡(くり)と法塔(はっとう)が、そり棟の二重層の屋根をひろげて、晴れ渡った空にそびえている眺めは、いかにも、禅宗の古刹といった感じがした。
 甚造が宗務所に交渉をして展示会に借りた方丈は、庫裡の左側の広い廊下を渡ったところにある。別棟になった広壮な建物であった。

※この何気ない文章にわしはすごさを感じる。
 難しいと思った漢字にはルビを振ったが、この文章がどこからの出典かわかった人はなかなかの読書家だと思う。このつづきは、また明日する。

■さてさて昨日のイギリスの軍艦を取っ払ったので、今日は少しだけ進んだぞ。
「たまや」のほうも第6章を終えたので、次章に突入だ。こっちは9章立てになりそうだ。長くなるが仕方ない。
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by kingminoru | 2005-04-27 16:09 | 小説家(小説)

幽霊と軍艦

■午前中はわりと仕事が捗ったのに、午後になってぱたりと進まなくなった。
 そういえば昨夕、担当編集さんがゲラを受け取りに来たので、軽く飯を食った際、かつて芥川賞・直木賞の両候補になったあの勝目梓さんは、一日15枚をノルマとしているそうで、それ以上は書かないそうだ。
 もちろん4、5時間で15枚書けるときもあるだろうし、8時間粘っても書けないときもあるだろう。それでも15枚がノルマだという。
 ああ、わたしはそれでは間に合わない。間に合わないが、今日はもう進まない。無理に進めるとろくなことにしかならないから、中断しよう。
 そもそも、書き出しが気にくわんのだ。
 イギリスの軍艦が来たことと、幽霊が出た話がどこでどうつながるんだ?
 まったくつながりがないだろう。無理につなげようとするから先に進まないのだ。
 何だ、こう書いているうちに問題解消じゃないか。
 さっさとイギリスの軍艦なんぞ引っ込めちまおう。今日はもう執筆意欲が殺がれたので、明日削除だ。
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by kingminoru | 2005-04-26 16:24 | 小説家(小説)

予期できない災厄

■昼にラーメンを作ろうと葱をきざみ、湯を沸かしてテレビをつけたら、尼崎で電車の脱線事故があり、死者25人、負傷200数十人というニュースを知り唖然となる。
 いったい何が原因で、こんな大きな事故が起きるのだ? まさかテロではあるまいな。ともかく亡くなった方のご冥福を祈るしかない。

■昨夕は河田町のカレー料理「シディーク」で食事会。「伝伝の会」メンバーとの会食だったのだが、昼間の国立劇場の演し物は観ずに食事のみの参加でした。
 昼は家で、遅れている仕事をしたのだがさっぱり進まずでありやんした。

b0054391_14302746.jpg■こちらは柴田よしき氏の新作『シーセッド・ヒーセッド』(実業之日本社 1700円+税)毎回、柴田さんありがとう。それにしても彼女の旺盛なる執筆力には頭が下がる。
 今回は探偵小説であります。いつもながら軽妙な筆致が冴えています。
 シリーズものですが、本作単独でも十分堪能できる作品です。
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by kingminoru | 2005-04-25 14:30 | 小説家(小説)

ゲラゲラゲラゲラ

■朝からずっと『隠密廻り無明情話』のゲラ。
 昼はおにぎりを作ってもらい、公園に行って食べる。花粉症が治ったからそんなこともできる。帰宅して、またゲラ。
 画家の渡辺さんから装丁画の件で打ち合わせ。電話とFAXでやり取りする。

■「ねえ、ねえ善さん、ちょっと表にいらして」
 下駄音をさせておつたがやってきた。
「なんだい、どうした?」
「いいからいらして」
 早く早くと、おつたは急かす。
 善之助はおつたに手を引かれながら、暖簾を跳ねあげて表に出た。
「ほら、善さんあっちよ。きれいな虹でしょう」
 おつたの指さすほうを見た。大きくて見事な虹が東の空にあった。
「こんなに大きくてきれいな虹は、初めて見るような気がするわ」
 善之助はため息まじりいうおつたの横顔を盗み見た。それから、そっと心の中でつぶやいた。
 ──おつたさん、おまえさんも十分きれいだ。

 物語はそうやって終わった。これは6月刊です。お楽しみに。
 ふう、疲れた。もう午後7時だ。
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by kingminoru | 2005-04-23 19:03 | 小説家(小説)

狂った夜

■壮絶な夜であった。その狂宴はこうしてはじまる。
 その日の夕刻、わたしは一本の仕事を終え、いつもの店に行き静かにビールを飲んでささやかな祝杯をあげた。おとなしく、つつましく。

 そのうち隣に丸さんが来て、将棋の話を少しする。丸さんは今年61歳だが、この年から介護士の資格を取るという。えらいと思う。高齢化社会を見越して、これから自分も役に立ちたいという思いと、少しでも収入につなげたいという意向らしい。その心意気がいい。いくつになってもチャレンジするのはいいことだ。 

 その隣にヒーちゃんがやってきて北海道旅行をするという。話題は自然に、北海道のことになる。ぼくは焼酎の水割りを飲みはじめており、少し心地よくなっていた。

 そんなところへ銀次郎から電話──。
「エミちゃんにいるけど、ジュンちゃんもいるので来ませんか?」
「どうしようかな。もう結構飲んでいるしな」
「ずっといますから」
 何だ、来てくれって誘いじゃないか。

 ま、でもジュンちゃんがいるなら顔を拝みに行こうかと思い、すたこらさっさでエミちゃんにゆく。ドアを開けるなり、すでに店内は盛り上がっている。カウンターの止まり木にいた客が、一斉にわたしを振り返る。視線に圧倒され、のけぞりそうになるのを踏ん張って耐え、前進するなり銀次郎の隣に着席。
「ジュンちゃんが可愛いから来たんだよ」
 と、すでに酔っぱらいモードの銀次郎がのたまう。わたしは赤面する。周章狼狽を誤魔化すために、へらへら笑って煙草に火をつける。隣にジュンちゃんが座って、シャッシャカ、シャッシャカと水割りを作ってくれる。 
「はい、かんぱい」
 にっこり微笑むジュンちゃんは色が白くて、お目目がぱっちりしていて愛らしい。グラスとグラスが小さな音を立ててぶつかり、わたしにとっての二次会のはじまり。

 たいして意味のない話ばかりをした。まわりのカラオケがうるさいから、満足な会話ができないのだ。そのうち話なんかするとこじゃないと開き直り、わたしたちも歌うことになった。
 銀次郎が井上陽水を歌えば、見ず知らずの隣のお兄さんが佐野元春を歌う。ジュンちゃんは竹内まりやを歌う。お上手。わたしは、自分の歌を探すためにこっちを調べ、あっちを調べ、その合間に酒を飲む。
 気づいたときには銀次郎はもう何曲も歌っている。隣のお兄さんも歌いまくりだ。店中が歌の渦で埋めつくされている。マイクはあっちに行ったり、こっちに行ったり。お客のほとんどが、「へべ」の「れけ」状態。あーらやんやのさっさかさあ~。
 それなのに、わたしはまだ何も決められずに、どれにしようかあれにしようかと曲選びに悪戦苦闘。
 はっと気づいたら、もう半分の客が入れ替わっているではないか。このままではわたしは一曲も歌わないことになる。
 別にそれでもよいのだが、なんとしても一曲ぐらいと思い、やっと探したのがビートルズの「ヒ・カム・ザ・サン」だった。

 音楽がはじまった。が、横文字が画面に出てくるなり、わたしはつっかえて歌えない。歌えないから「ナントカカントカ」といって鼻歌になる。恥、恥、恥。
 それが終わったあとは、みんなマイクの取りあい。組んずほぐれつで歌いまくる。わたしは聞くことに終始。ボトルを一本空けてお開きになったが、なにも歌っていないわたしはすごいエネルギーを消耗していた。くたくただった。
 帰ってベッドに倒れ込むなり鼾をかいて深い眠りに陥ったようだ。
 あんまり壮絶でもなかったか・・・。
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by kingminoru | 2005-04-22 10:14 | 小説家(小説)

19番ホールを探せ!

■「19番ホール」のマスターは背の高いやさしい人だ。趣味のゴルフはプロも顔負けの腕前である。最近、マスターは一人で店を切り盛りしている。
 ぼくはたまに一人になりたいことがある。昨日仕事を終えて、「19番ホール」に行ったのもそんな気持ちからだった。
 途中に神社があり、そこでお参りをする。お願いするのはいつも同じだが、これは人には絶対に教えない。神様だけが知っている。
 で、店で食べたのは、「初鰹の叩き」と蕗の薹やたらの芽の「山菜の天麩羅」。うんもううまかったなあ。小さな生ビール一杯に、焼酎を少し。これで1500円。滅茶苦茶安い。さらにはぼくが帰るまで、客が来なかったのもラッキー。
 店にとってはアンラッキー。

■本日は一本仕事を終えて、メールで送る。疲れた。少々……。
 休みたい。
 だけど、休めない。
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by kingminoru | 2005-04-21 17:15 | 小説家(小説)

そっと、さわりを最後だけど・・・

■ぽそりとつぶやいた声は、お志津には聞こえなかったらしく、何でしょうと長い睫毛を上下させた。
「いえ、つくづくきれいな人だと思っただけです。こんな長屋にはもったいない」
「まあ」
 お志津は、はにかんで目を逸らしたが、その瞬間、ぽおっと頬を赤らめた。色が白いからなおその色が際立った。
「それじゃ今お茶を……」
 恥ずかしそうに土間に引っ込むお志津を見て、菊之助は人を誉めることも悪くないと独りごちた。すると、またお志津が振り返った。
「さあ、お入りになってください」
「はい」
 快く返事をした菊之助は、お志津の家に吸い込まれるように入っていった。

 なんてことを今日は最後に書いて、書き終わったぞ!
 これで明日担当者にメールすることができる。
 ひとまず一本上げてホッ。
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by kingminoru | 2005-04-20 17:34 | 小説家(小説)

ちょっとだけ暴露

■彼らが食堂から出て行くと、順平は思いきって追いかけた。ポケットに両手を突っ込んで悠然と歩く裕次郎。隣に肩を並べる赤木は少し背は低いが、その広い肩幅が堂々としていてスターの貫禄十分だ。
「赤木」
 声をかけると赤木と裕次郎が同時に振り返った。
「よお、順平」
 赤木はいつものように声をかけてきた。裕次郎もまぶしそうに目を細め、
「先に行ってるぞ」
 気遣ってくれたのか、裕次郎は片手をひょいとあげスタジオに歩いていった。
(以上、裏帯から。本文からの抜粋でもありますが・・・)
b0054391_1527543.jpg

■今日あたりから書店に並んでいるはずです。
 しつこく、宣伝でした。スンマセンです。
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by kingminoru | 2005-04-19 15:27 | 小説家(小説)

すごい店だった

■そこは「しょんべん横町」と呼ばれていた。入口の看板に「洋風立ち飲み居酒屋」と記されたのを坂本さんが発見し、そこに行くことになった。鈎形に曲がった暗い路地にその店はあった。カウンターとボックス席三つの小さな店。立ち飲み、ではない。
 飲み物はなんでも300円。つまみは安くて100円、高いのでも300円。キャッシュ・オン・デリバリー・システムで注文の品と引き替えに現金を払う。
 カウンター内には豆絞りの手拭いを頭に巻いた、いかつい親爺が一人。強面だ。笑うと妙に愛嬌があり、そのギャップが可愛い。その人がマスターだった。
 わたしと坂本さん、そして小杉さんの三人で、そんな店で酒を飲んだ。昨夜のことだ。
 わたしたちは中国のことや映画のことや芝居のことや小説の話をした。
 そんなこんなで盛り上がり、河岸を変えることになったが、芸のないわたしたちはすぐ隣の小料理屋に入って酒を飲んでつまみを注文して、またさっきと似たり寄ったりの話で盛り上がり、それぞれに解散した。小杉さんはシチューを作っているので、それをこれから食べるといっていた。坂本さんは明日はセミナーがあるといっていた。
 わたしはいつもと変わらず仕事だが、頭がいたいよお~。

■フランス語で「鯛焼き」のことをなんというか?
 shippo ma de unという! 
 つまり、「しっぽまであん」である! ギャハハハ! 
 今日のつまらないギャグであった。(おれは壊れかけているかも・・・)
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by kingminoru | 2005-04-18 16:09 | 小説家(小説)