悲願の1勝 宮里優作
◆決して体の大きいほうではない。
体格的に恵まれているとはいえない。
しかし、彼のスイングはきれいだ。そして、飛ぶ。
技術もある。
アマチュア時代は数々の試合で優勝してきた。
そして、鳴り物入りでプロ転向。
ところが、成績はなかなかふるわない。
もう一歩のところまで行って、そこで終わってしまう。
勝利をつかみかけて、自滅。
その繰り返しだった。
関係者だけでなく、多くのファンもいつ勝ってもおかしくない選手だと思っていた。
宮里優作。
女子プロゴルファー宮里藍の兄。そして、聖志の弟。
2013年12月、読売カントリー。
その年、最終戦となるJTカップ。
優作は初日から調子がよかった。しかし、最後に崩れるのが、これまでの優作のパターン。
そして、問題の最終日、8日(日)。
スタートしたが、ボギーでスコアを落とす。
ああ、やっぱり駄目なのか、という思いが脳裏をかすめる。
そう思ったのはわたしだけではないはず。その一方で、ここで踏ん張ってほしい、崩れてほしくないと祈るような気持ちでもあった。
もちろん、本人がそのことを一番意識し、ハートを強くしていたはずだ。杉沢キャディはどんなアドバイスをしているのだろうか? そんなこともまで気になった。
追い上げてくる選手を振り切るために、リードを広げたいが、逆に縮まってくる。
6番7番と連続バーディ。しかし、8番9番で連続ボギー。
後半は我慢のゴルフ。
そして、迎えた最終18番。リードは3打差。
ダブルボギーでも優勝できる。
放ったティーショットは、グリーン左のラフへ。それも逆目の微妙なところにボールがある。
それでもピンの下につければ、パーは拾える。最悪でもボギーであがって優勝。
そして、優作の2打目のアプローチショットは、トップしてグリーンを横切り反対側のラフへ。
ギャラリーからため息と悲鳴。
天をあおぎ、胸の前で手をにぎりしめる人も。
優作はつぎのアプローチにかかった。寄せワンの、ボギーフィニッシュでOK。
優作はひとつ息を吐き、ゆっくりクラブをテイクバック。
ボールを高く上げてのロブショット。
放ったボールはラフからふわりと弧を描いて宙に舞い、グリーンに落ちた。
そのままカップに向かって転がる。
一瞬の静寂。
ギャラリーは息を詰めてボールの行方を見守った。
カラン。
入った! チップインパー!
瞬間、優作は力強くガッツポーズ。ギャラリーから歓声。
グリーン奥で見守っていた妹藍の目に涙が光った。
ガッツポーズした優作だったが、その場で膝から崩れ涙を堪えることができず、肩をふるわせた。
プロ11年目にして初めてつかんだ勝利だった。
おめでとう、宮里優作。
by kingminoru | 2013-12-09 06:51 | ゴルフ