ハートの満月と祭

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◇祭をやっているのは知っていた。ただそれだけのことだったが、途切れ途切れに聞こえてくるお囃子の音に釣られるように家を出た。
 神社に近づくと、お囃子の音ははっきり耳に入ってくる。笛と太鼓の音は、汗ばんだような暗い空に広がっていた。さらに近づくと、道路が通行止めになっており、その先にはたくさんの屋台がひしめきあうように並んでいた。
へえ、こんなに賑々しくやっていたのかと、軽い驚きと感動。幼いころは祭の縁日に行くのが楽しみだった。
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射的、綿飴、金魚すくい、おもちゃ屋、饅頭屋、たこ焼き……。
 ここにもそんな屋台が並んでいた。だけど、よく見ると少し違う。時代の流れをその中に感じる。金魚すくいの屋台には、赤い金魚しかいない。出目金や和金や琉金。黒や赤、背びれや尾びれの長い金魚などいろんなのがいた。
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その屋台のおじさんがお手本を見せてくれると、面白いようにすくえる。だが、自分でやるとすぐにすくい紙が破れてしまう。
 おじさんは、ふふふと、含み笑いをしてそんな自分を見ていた。やっとのことで何匹かすくえ、それを家に持って帰っても、金魚はすぐに死んでしまった。
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 射的も好きだった。やはりここでも子供たちに人気があった。鉄砲は同じようだが、景品はずいぶん変わっている。わたしが小さいころ狙ったのは、プラモデルだった。鉄人28号、サンダーバード、戦車にスポーツカー。ここの射的場にはそれらはなかった。
 代わりに今子供たちに人気のアニメのキャラクターなどが目を惹いた。もちろんプラモデルはあるのだが……。これも時代の流れ、年代のギャップ。それだけ、わたしが歳をとったからだ。仕方ない。わたしにも若いころがあった。そしてあの子たちも、いずれわたしのような中年になるのだ。
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 神社の境内に入ると、御輿を担ぐ人たちが勢揃いしていた。祭の総括をして、最後の御輿の繰り出しをするようだ。
 腹掛け法被に股引き、ねじり鉢巻き、足袋と雪駄。いなせだねえ。
 ちょっとだけ、ピリッとした緊張感を覚えるのは、御輿に参加する人たちにそれだけの気負いを感じるからだ。
 やがて、御輿は人込みの中に揉み合うようにして出て行った。それがこの秋の、この街の最後の御輿なのだ。
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 縁日を一回りして家に帰った。たこ焼きを買ったが、これが大きい。ちゃんと大粒のたこも入っている。500円。高いのだろうか? 安くはないと思うが。
 テラスに出ると仲秋の名月が見えた。わたしにはそれがハートに見えた。
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by kingminoru | 2005-09-19 07:31