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ほっと胸を撫で下ろす

◇甥の智健の病状が気になっていたが、無事に転院をすませた。
 苦しそうな顔で痛くてたまらないと、蚊の鳴くような声でいったやつのことが気にかかってしようがなかった。
 妹の報告では大分楽になったということだったが、この目でたしかめるまでは気が気でない。それで面会時間が許される午後3時を待ちきれずに、車を飛ばして二子玉川に近い日産玉川病院に駆けつけた。
 この前の帝京大学付属病院と違い、閑静な住宅街のなかにある。病院内も広くて清潔感に溢れていた。受付で病室を聞いて三階に上がる。
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◇病室を探し当て部屋に入ると、智健はカーテンを閉め切って寝ていた。
「おい、寝てるのか。トモ、寝てんのか……」
 小さな声で呼びかけると、ゆっくり目を開けた。
「悪いな起こして」
 智健はいいよという。カーテンをこじ開けて、椅子に座ると智健も身を起こした。
 大分楽になったという。声にも張りがあった。痛みのことを聞くと、
「ちっともないよ。シャワーも浴びたんだ」
 へえ、シャワーをと驚く。コーヒーとポカリスエットが飲みたいというので、売店に走って余分に買ってきてやる。面会室に行こうというので、歩けるのかと聞くと、走りたいぐらいだと明るい笑顔を見せる。ホッとした。
 それにほんとにすいすい歩く。先日は左胸を庇うように、今にも倒れるのではないかという足取りだったのだが、すっかりよくなっていた。
 ベンチに座って大学のことやレポートのこと、勉強中の宮沢賢治のことなどを楽しそうに話した。キャンプに行くかと聞くと、行きたいという。連れて行ってやると約束する。
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 つぶれていた肺もふくらみはじめ、ドレーンは持って歩いていたが、管はピンチで遮断してあった。ここの病院の処置はいいよ。やっぱり専門にしている病院がいいねという。
 玉川病院は自然気胸の専門医が多数いて、その権威でもある。的確な治療によって、智健は快方に向かっていた。
 そのうち妹が来たので、バトンタッチして病院をあとにした。ただ、病室を出る前に呼び止められた。
「おじちゃん、カウンターバー連れて行ってくれるって約束。覚えてるよね」
「ああ、治ったら連れて行ってやる」
 わたしは彼に指二本でVサインをしてやった。

by kingminoru | 2005-09-29 14:58