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帰ってきた一匹とひとり


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b0054391_12273341.jpg         (*赤ちゃん「立夏」ちゃんと遊ぶアニー)

◇田貫湖キャンプはあいにくの天気ではあったが、晴れ間もあったり、満点に散らばる星を眺めることも出来た。紅葉を期待したが、まだ一部しか紅葉していなかった。
 紅葉を見たのは、帰路、わざと遠回りをして本栖から河口インターに抜ける道(国道139号)を選んだときだ。
 とくに氷穴と風穴の前を走る富士パノラマラインの一直線道路の両脇は、黄色や橙(だいだい)、緋色などに色づいた葉叢が常緑樹の緑に映えていた。
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 (*ねえ、まだテント立たないの。お腹空いたよ)

 キャンプはアニー中心(わたしの場合だけ)だったけど、湖の鴨を追い立てたり、モグラの穴をしゃかりきになって掘ったり、芝の上をそれこそ飛ぶように走ったりとひとり(一匹)で大自然を満喫していた。
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◇早速仕事にかかっている。それじゃ、中途で終わっていたつづきです。

【ワンニャン物語】第4話
 別れ──3
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 0時35分、トノが息を引き取った。
 あまりにもあっけなかった。昨日、武田先生に往診に来ていただき、点滴を受けたあと、トノはわりと穏やかになった。薬が効いてきて、このまま眠れば、治るのではという淡い期待を抱いた。私と妻は、トノの落ち着いたような様子に安心し、夕食を取った。私はビールに水割りを飲む。ふたりとも睡眠不足ではあったが、何となくほっとしていた。軽く食事を終えた私は、夕刊と本を携えトノのそばに行った。
 そのとき、心なし呼吸がさっきより荒くなったのではと、気になった。さっきもこうだったかなと思う。不安になり妻を呼んで、その件を聞いてみた。彼女もあまり自信はなさそうだったが、以前(かなり呼吸が激しいとき)よりはいいんじゃないのと言う。
 そうかと納得し、トノに呼びかけたりした。か細くかすれた声で「にゃあ」と応える。本当にか弱い、今にも消え入りそうな、頼りない声だった。
 しばらく私は彼に話しかけ、落ち着いたようなので、本に目を通しているうちに、眠ってしまった。
「ちょっと様子がおかしい」
 妻にお揺り起こされたのは、それから2時間あまり経ってからだった。
 時計の針は11時を指していた。
 トノの息は確かに荒かった。苦しそうに鳴き、また痛がっているようでもあった。
 私が眠りこける前とは大違いである。治療を受けてから10時間弱で容態が急変した。妻が武田先生に電話する。先生は自宅にいたようだが、伺いますと言ってくれた。先生が神様に思えた。私と妻は必死になって、トノを励ます。
「ガンバレ、大丈夫だ、絶対大丈夫だ」
 私は何度も同じことを言う。妻は血が通わなくなり、今や力のちの字もない、トノの後ろ両脚を必死になでさする。
 先生が30分ほどで到着。例によって問診。ほとんど妻がしゃべる。先生は聴診器でトノの脈や心臓を探る。
「心臓の鼓動が乱れてますね」
先生は聴診器を外して言う。それから、これからの処置についてと、説明をする。
 心筋症の点滴注射と、痛み止めの注射を打つことにする。痛み止めは、心臓の関係もあり、通常より半分ということだった。皮下注射である。その後、もしまた痛くなって苦しむようならと、先生は注射と痛み止めのアンプルを示し、注射の打ち方を教えてくれた。いざという場合に備え、置いていくと言うのだ。私たちは真剣に聞く。もう必死だ。トノをこれ以上苦しめたくない。
 先生をエレベータまで送り、私はほっとしてリビングでぼんやりタバコを吸った。
「やっぱり何だか変」
妻が顔色を変えてやってきた。どう変なんだと言いつつ、寝室に行き、トノを見る。何となく変だと私も思った。呼吸が不規則で、しかも荒い。舌を出している。妻が先生に指示を仰ごうと言う。今処置してもらったばかりなのに、気の引けるものもあったが、そんな場合じゃない。指示してもらうだけだ。妻が先生に電話をする。あれこれ説明するが、半ば動転していて、うまく伝わらない。私が代わりに説明を始めた。その間に妻は寝室とリビングを、おろおろ行き来する。
「しゃっくりみたいな咳をする」「呼吸が不規則で、ハアハアぜえぜえを繰り返す」などと妻が青い顔で報告する。
 私はそれを先生に伝える。先生曰く、
「正直言って、危ないかもしれない」
 そのとき、妻の声がした。
「息をしてない!」
 私は受話器を握りしめたまま、一瞬目をつむった。それから冷静な声で、
「呼吸が止まったようです」
 そう先生に告げた。先生はすぐ引き返すと言ってくれた。
 電話を切り、寝室に行く。トノは呼吸をしていなかった。体をさすっても何の反応もない。妻がマウス・ツー・マウスで息を吹き込むが、それも気休めでしかなかった。トノは逝ってしまった。享年10。
 私と妻、ふたりで通夜をやった。好きな缶詰を、ドライフードを、そして水と花を添え、線香を炊いた。彼の思い出をいっぱい語り合った。妻とふたりで、つたない般若心経をあげた。私は途中でつっかえ、嗚咽を漏らした。妻は最後までお経を上げた。その後、滂沱の涙を流したが、ちゃんとお経を上げた妻が偉く思えた。
 トノはとてもいい子だった。賢い猫だった。私のデスクにあがっても、絶対キーボードには乗らなかった。こんなことを言えばきりがない。とにかくトノにサヨナラを言った。「ごめんなトノ、でもおまえは幸せだったはずだ」
トノは500%、いや1000%天国に行く。それだけは確信している。
 ありがとうトノ。

by kingminoru | 2005-10-31 12:33 | ワンコ&ニャンコ