人気ブログランキング |

頼む、囓るな!

◇書きはじめて、もう書けないという時間帯が生じる。そんなときは思い切って切り上げるか、他のことをして気分転換をするが、とくに新しい作品の出だしとなると、気になってしょうがない。読書をしても身が入らず、あれこれ構想をめぐらすのだが、今日ははたと気づいたというより、伺いがあった。
 夏まであげる書き下ろし原稿が中途で終わり、そのまま手をつけていないのだ。まずいぞ。とてもまずいぞ。手をつけなきゃならない。そっちのモードにも頭を切り換えなければならないと、冷や汗をかいている。

◇ミーチャのためを思ってアニーを寝室に閉じ込めたら、寝室の柱を囓られたー!
 お願いだからそれだけはやめてくれー!
 心配のミーチャだが、何とか大丈夫のようだ。それに、昨夜は人間のソファを占拠して仲良く居眠りをしたのであった。
b0054391_15454486.jpg

【ワンニャン物語】第8話
 出合い──2
 家の近くには杉の植林が進む水晶山という雑木の山があった。そして、田や畑が広がっており、そのなかを浜戸川が蛇行している。
 リキが我が家の一員になって以来、ぼくはそんな山や田や畑の畦道を駈けまわった。夏になれば一緒に川で泳ぎ、ときに海に行ったりもした。
 そんなころ、母にひとつだけ注文したことがある。
「リキは誰にもやっちゃだめだよ。どこにも連れて行かないでよ」
 母はおそらく笑っていただろう。
 ぼくがそんなことをいったのにはわけがあった。
 保育園に行っているころ、ほんの短い間だったが一頭の山羊がうちの庭で飼われたことがあった。メーメーとうるさく鳴く山羊だったが、ぼくはその山羊をいたく気に入っていた。ところがある日突然、親戚の叔父がやってきてその山羊を連れて行ったのだ。
 ぼくは庭の箒を持って、その叔父をぶっ叩き、
「連れて行くな! 連れて行くな! 何で連れて行くんだドロボー!」
 と、泣き喚いたことがある。だからリキのことも、もしやある日突然誰か連れにくるのではないかと心配したのだ。
 しかし、それは杞憂でしかなかった。リキはずっと家から離れることはなかったし、家族の誰にもよくなついた。
 勤めに出ている父のバイクの音がすると、ぼくたちより早く気づき、吠えて帰りを教えてくれた。また、ぼくが学校から帰ると、尻尾を振りながら飛びついてきた。
 しかし、犬の躾など知らなかったから、リキはまったく自由奔放に暮らしていた。出来る芸といえば、「お座り」と「チンチン」と「お手」だけ。あとは何もできなかった。
 そして、困った癖があった。

by kingminoru | 2005-11-04 15:45 | ワンコ&ニャンコ