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監禁された男と、猫の死

b0054391_17285812.jpg◇「おれは誰だ? おれはなぜ15年間も、こんなところに監禁されなければならないのだ。誰がいったいこんなことをおれに、何の恨みがあるというのだ……」
 普通のマイホームパパだったはずの平凡なサラリーマンが、濡れ衣を着せられ、とある超高層ビルの一室に監禁され、時効となる15年後に街に放り出され、自由の身となる。だが、そのときこそが男の闘いの幕が切って落とされる瞬間であり、謎解きの開始であった。
 男の名はオ・デス──。
 カンヌ・グランプリの他、数々の映画賞に輝いた『オールド・ボーイ』。
 韓国映画の躍進には目を瞠っている昨今だが、本作はまさに金字塔を打ち立てたのではないだろうか。原作は「漫画アクション」に連載された『オールド・ボーイ』。
 日本の映画人はしてやられたと思ったに違いない。
 わたしもこの映画には脱帽した。韓国映画はどこか甘く、ミスもある。が、本作はほぼ完璧。カンヌグランプリ、納得の作品。大推薦!



【ワンニャン物語】第12話
 出合い──6
 家族に可愛がられ、リキとも仲良くやり、屋敷内を自由に闊歩し、庭の柿の木や枇杷(びわ)の木、果ては柿の木をつたって屋根に登っていたナガだったが、彼の平和はそう長くはつづかなかった。
 それは小川の土手に土筆(つくし)が芽吹き、梅の木に鶯(うぐいす)が止まり、きれいな歌声をあげるころのことだった。ただ、その日は異常に寒かったことを覚えている。
 ぼくがすぐ上の屋敷──母方の本家──で従兄と遊び呆けている夕方だった。
「稔ー稔ー!」
 家まで五十メートルも離れていないし、その間は畑だから母の悲痛な叫びにも似た声はよく聞こえた。ぼくが何だろうと、従兄の家の縁側から顔を見せると、
「ナガが大変なことになってる! 噛まれた犬に噛まれた!」
 と、母はもう泣きそうな声だった。
 ぼくはいやな胸騒ぎを覚え、靴の踵(かかと)を踏みつぶしながら家に駆け戻った。
「犬に噛まれた。血だらけになって戻ってきた」
 母は狼狽していた。台所の流しの脇に勝手口があり、そこから座敷に向かって帯のように引かれた血の跡があった。
 ぼくは顔を強ばらせ、座敷をのぞいた。ナガが座布団の上で、血だらけで蹲(うずくま)っていた。頭も四肢も血に染まっていた。呼びかけて足を触ると、完全に折れている。いや噛み砕かれているのがわかった。胸骨も折れているらしく、すでに虫の息だった。
 あまりのショックに、ぼくの頭は真っ白になった。
 介抱しようにも、もう手の施しようがないのはぼくにもわかった。ただ、涙を堪え、噛んだ犬に憎悪を燃やし、濡れたタオルでそっと血を拭き取ってやるのが精いっぱいだった。そして、ナガは一時間もせず、息を引き取った。
 どこで噛まれたのか知らないが、よくこんな体で帰ってきたと感心もしたが、悲しみのほうが強く、ぼくは奥の部屋に走り込むと、重ねられた座布団に顔を突っ込んで慟哭(どうこく)した。肩を揺さぶり、背中を波打たせ、声を押し殺して泣きじゃくった。その間、母はぼくのことを思いやって一度も部屋には来なかった。
 やがて涙が涸れると、ぼくはナガを噛み殺した犬を突き止めようと近所を訊ね回った。犯人(犬)はすぐに判明した。
 殺してやる!
 ぼくは石をつかんで、その家に走った。だが、犬小屋の前まで行っただけで、その犬をにらみつけるだけで、何もすることができなかった。ただ、手のなかの石がつぶれるのではないかと思うほど握りしめているだけだった。

by kingminoru | 2005-11-11 17:27 | ワンコ&ニャンコ