明け方のこと
■か細くすすり泣くような声。足が小刻みに震えている。夢を見ているのか……。
アニーはわたしの足許にある、ふかふかのマットに横たわっている。普段は滅多に鳴かないのに、寝ると決まって寝言ような声を漏らしたり、吠えたりする。
午前6時前――。
鳥の声はするようになったが、窓の外はまだ暗い。
わたしは一本の作品を仕上げ、ゆっくりコーヒーを味わっている。このときが一番充実を感じるときだ。
だが、汗をかいた運動後のような爽快感はない。どんよりした疲れを、体の芯に感じている。書きあげたときは、いつもそうだ。そして、不安もある。
いい作品になっているだろうか? 面白いものに仕上がっただろうか?
いつも襲われる強迫観念。だが、まあいい。すぐにつぎの仕事に取りかからなければならないが、今日は少しのんびりしよう。
そろそろアニーをたたき起こして散歩に出かけようかな。
「アニー! 起きろ!」
by kingminoru | 2006-11-22 06:06 | 小説家(小説)